一軸入魂ブログ 挑戦でつながる②自社商品誕生&ギフトショー出展
2025/08/28
2025年9月3日、出展するギフトショーが開幕します。
半年前には想像もしていなかった伊藤金属総業の挑戦です。
前回のブログでは、出展に至る経緯について書きました。
前回のブログ 挑戦でつながる①
今回は後編として、商品の誕生について綴っていこうと思います。
目指していた「伊藤金属らしい製品」の誕生にむけ、色々な事がつながっていきます。
5月に参加した、伊豆市主催のふるさと納税返礼品の勉強会で偶然会ったのは、3年前に地域おこし協力隊として伊豆市に移住し、自ら狩猟を行いその鹿革で鞄等革製品を製作しtekuと言うブランドで販売している革職人の松本天太君。
3月末の催事出店の際に、市内の地域おこし協力隊のブースが有り、その時は隊員も何人もおり挨拶程度の会話しかできませんでしたが、地域おこし協力隊員としての彼のミッションが地場産品開発だったためふるさと納税返礼品の勉強会に彼も出席しており、偶然再会。
【松本天太氏プロフィール】
2022年、伊豆市の地域おこし協力隊として中伊豆に移住。地場産品開発の活動を通じて、獣害の原因となっている鹿の革を活かした製品づくりに取り組み、その経験から革ブランド 「teku」 を立ち上げる。自らも猟師として命と向き合いながら、一つひとつ手仕事で作品を生み出している。
また、所属する 「またね自然学校」 では、伊豆の自然を舞台にした環境教育を実践。クラフト体験や狩猟体験を通じて、命や自然との関わりを考えるプログラムを提供している。
帰り際に互いが覚えていたので挨拶。
「蝶番と地域の中の何か」をつないで商品にする事を考えていたので、天太君の扱う鹿革の余った材料で何かできないかと相談しました。
プレス加工で発生する端材はスクラップとして処分するので、金属同様に鹿革の「端材」を有効利用できるのでは、と考えたのです。
こんな風に使いたいのでという私に、天太君が返した言葉に、しまった!とハッとします。
「鹿の命から頂いた革は全て使い切るので捨ててしまう端材は有りません」
自分の都合の良いように考え、なんて失礼なことを言ってしまったんだと直ぐに詫びましたが、次に天太君が言ったのは、意外な言葉でした。
「蝶番を使ったモノ、作りませんか?名刺入れとかできそうです」
思わぬ形で、蝶番と地域資源をつないだ製品の誕生のきっかけが生まれました。
天太君との打ち合わせが始まります。
その中で、天太君の「猟師」と「革職人」としての思いに触れることになります。
天太君のブランド「teku」に込められたメッセージです↓
"猟師として命と向き合い、革職人として紡ぐ"
「teku」は、てくてく歩くように止まらず進み続け、自然の恵みに感謝しながら、一つひとつ丁寧に仕立てる革製品ブランド。
「te」は「手」を表し、想いを込めた温もりを感じる丁寧な手仕事。
「ku」は「喰う」を表し、皮革は食肉の副産物であることを忘れず、頂いた命に感謝をして無駄にせず活かすことを。
ただ、単に「teku」という言葉以上の意味を持ち、ものづくりの背景を大切にしたメッセージが込められています。
「teku」のシンボルマークは、動物の蹄と命の螺旋をモチーフにしたものです。
蹄は野生の力強さと、自然との深いつながりを。
螺旋は命がめぐり、受け継がれていく循環を表しています。てくてくと、ひと足ずつ。確かに歩むものづくり。
手に取ってくださったみなさまの心に、そっと足跡が残りますように。
命と自然への敬意が込められた、心温まるものづくりを大切にしている事が伝わります。
伊藤金属総業の蝶番と伊豆市で捕獲された鹿から生まれる鹿革。
2つがつながる事で果たしてどんな名刺入れが生まれるのか・・・
革製品は「変化を楽しめる」のが魅力です。扱い方や手入れの仕方で「育ち方」が変わり個性になります。
蝶番に使用する材料の真鍮は、メッキやクリア塗装などの表面処理を行わないと変色してしまい、部品として使用する際にはそれが「劣化」と表現され不良品の扱いになりますが、趣味や雑貨の世界ですとそれを革と同様に「変化」と呼ばれむしろそれが好まれるそうです。
つまり、革も真鍮も互いに変化を楽しめる素材で有る事から、革製品と相性が一番良い金属は真鍮で有り、部品として特に好んで使われるのだそうです。
蝶番の材質は真鍮の生地決まりました。
実際に真鍮の蝶番を見てみたいという事で、廃棄品や販売できない在庫品の真鍮製蝶番のサンプルを天太君に渡し数日。
渡したサンプルが寸法的にちょうどよいというので、まずはそれで試すことになり完成した試作品がこちら↓
「蝶番を主役にしましょう」
の言葉通り、真鍮製の蝶番の存在を際立たせてくれるデザイン。
今まで、どちらかと言うと存在を消されがちな蝶番ばかりつくっているので、それだけで感動です。
蓋のヒンジ部分にまさしく金属製のヒンジ(=蝶番)を使用する事で、片手で開いてそのまま開いた状態を保てる構造です。
縦方向に開閉し名刺をサッと取り出せます。
ジッポのライターの蓋を開けたり閉めたりみたいに
「片手での開閉もくせになる」(天太君談)
使用した蝶番は実際の製品には使用できないため、専用品を設計・製作する事になる為、せっかくなのでデザインや縫製の選択肢が増やせる形状も検討。
並行して検討していた、蝶番を起点にヒトやモノやコトを繋ぐ取り組みのブランド名称も「TunagaR」(つながる)に決定。
伊藤金属総業とtekuのロゴマークとブランド名を配した刻印も製作。
「TunagaR 名刺入れ」
が誕生しました。
創業以来人や取引先とのつながりを大切にしてきた伊藤金属総業。
扉と柱を繋ぐ蝶番一筋と言ってよいものづくり。
蝶番と地域資源をつなぎ新たな価値を生み出す、伊藤金属らしい商品となりました。
初めての自社商品と呼べる物が、人と人が初めてつながる場面で活躍する名刺入れになったのも、偶然ではない気がします。
「命を無駄にせず紡ぐ革」と「人やモノをつなぐ蝶番」がつながり生まれた名刺入れが “出会いをつなぎ、物語を紡ぐ道具” になるのでは、なってほしいなと思います。
ついにギフトショー開幕を迎えます。
半年前、共同出展落選の失意からギフトショーへの出展を決断。
自社商品も全く形がなかった状況からのスタート。
沢山の方とつながりが無ければ、今の状況は生まれませんでした。
販売方法や販路の確保等、今まで経験した事のない事が続きますが、今回の挑戦がどんなことにつながっていくのか、本当に楽しみです。
今後、蝶番とモノやコトを繋げる取り組み「TunagaR」は、「つながる事業部」として活動していきます。